地銀再編が中小企業の金融環境に与える変化——マルチバンキングで備える

地方銀行の数が、静かに、しかし着実に変化し続けています。

1990年末には全国に132行あった地方銀行は、2025年3月末時点で97行まで減少しました。35年間で約3割減少した計算になります。合併・統合という形で地銀再編は今も続いており、2025年以降も新たな統合の動きが各地で報じられています。

下降する株価チャートのイメージ

※上記の社数については帝国データバンクの調査をご参照ください。

この変化は中小企業にとって何を意味するのでしょうか。再編そのものが地銀の経営基盤を安定させるという側面がある一方、企業側の金融環境にもいくつかの変化が生じます。

融資審査の変化——審査基準の標準化

地銀再編が中小企業にもたらす変化の一つは、融資審査プロセスの標準化です。

合併前の地銀は、地元密着の「関係性バンキング」を強みとしてきました。財務データだけでなく、経営者の人柄・事業の将来性・地域での評判といった定性情報を総合的に評価する手法です。複数行が合併して規模が拡大すると、審査基準の「統一化」が進む傾向があります。

資料を見ながら打ち合わせする様子

この変化は、財務数字に強い企業にとっては透明性の向上ともいえますが、定性情報が評価されにくくなるという側面もあります。自社の財務状況を整備しておくことが、融資審査においてより重要になっています。

店舗・ATM体制の変化——「デジタル活用」が選択肢に

再編に伴い、支店・ATMの配置が見直されるケースもあります。経営効率化を目的として、合併後の銀行は重複する支店を統廃合します。特に人口減少が進む地方では、採算の合わない拠点の再配置が続いています。こうした変化は、日常の金融サービスにおけるデジタル活用の必要性を高めています。

館内サイン(ATM・両替機等の案内)

振込・残高確認・明細管理といった日常業務については、ネット銀行や地銀・信金のネットバンキングを活用することで利便性向上につながります。来店が前提でない取引手段を持っておくことが、業務効率の観点から合理的な選択肢となっています。

地銀との関係を維持しながら「分散」を取り入れる

地銀再編への対応として中小企業経営者に広がっているのは、「分散」の発想です。

資金調達という観点では、地銀・信金との関係は引き続き重要です。融資審査においては、地元金融機関との長年の付き合いが依然として有利に働きます。一方、「日常の決済」「振込」「口座管理」といった実務面については、ネット銀行を組み合わせることで全体の効率を高めることができます。

夜にノートPCで作業する様子

帝国データバンクの調査(2025年)によると、ネット銀行をメインバンクとする企業は前年比41%増の7,903社、取引企業数は16,037社と10年前の約6倍に拡大しました。地銀との関係を維持しながらネット銀行をサブバンクとして組み合わせる「マルチバンキング」が、中小企業の現実的な選択肢として定着しつつあります。

まとめ:再編時代の備えは「関係維持」と「分散」の両立

地銀再編は今後も続く見通しであり、審査基準の標準化や店舗網の見直しといった変化は、中小企業の金融環境に少しずつ影響を与えていきます。重要なのは、再編を不安視することではなく、変化を前提とした備えを持つことです。融資や地域サポートの面では地銀・信金との関係を引き続き大切にしながら、日常の振込・決済・口座管理にはネット銀行を組み合わせる「マルチバンキング」が、現実的な備えとなります。まずは自社の取引を「融資・調達」と「日常の決済」に分けて整理し、後者を担うサブ口座の追加から検討してみてください。

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