地方銀行口座からネット銀行に切り替える法人が急増——その理由と中小企業への影響

「メインバンクは地元の地方銀行」という傾向が、徐々に変わってきています。

銀行の看板

帝国データバンクの調査(2025年)によると、ネット銀行をメインバンクとして利用する企業数は前年比41%増の7,903社に達しました。メイン・サブを含めたネット銀行との取引企業数は16,037社と、10年前(2013年)の約6倍にまで拡大しています。一方、地方銀行のシェアは40%を割り込み、39.76%まで低下しました。

※上記の社数については帝国データバンクの調査をご参照ください。

中小企業が目的に応じて金融機関を使い分けるようになった、経営行動の合理化の結果といえます。

1. 「メインバンク一択」から「目的別の使い分け」へ

かつて中小企業の銀行選びは、「メインバンク=地方銀行(または信用金庫)」という構造が長らく続いてきました。融資の審査を担う地方銀行との関係を維持することが、資金調達のうえで最優先とされていたからです。

ビジネスパーソンの手元

ここ数年で変化が生じています。ネット銀行が「振込専用のサブ口座」として選ばれるケースが急増し、経営者や財務担当者が複数の金融機関を使い分ける「マルチバンキング化」が加速しています。

背景にあるのは、シンプルなコスト問題です。地方銀行の窓口振込手数料は金融機関によって異なります。一方、ネット銀行では100円台の銀行が増えてきています。月に30件以上の振込が発生する企業にとって、この差は年間換算で数十万円規模のインパクトになります。

さらに、口座開設のスピードと手軽さも選択肢の幅を広げています。地方銀行・信用金庫では書類提出や担当者との面談を経て数日〜数週間かかるのが一般的ですが、ネット銀行ではオンライン完結で申し込め、条件を満たせば最短即日で開設できます。

2. 「金利・融資」から「付加価値」重視へ——銀行選びの軸の変化

かつては「融資してくれるかどうか」が金融機関選びの最大の軸でした。しかし現在は、とりわけ設立数年以内の若い企業において、日常の業務コストを下げる「実務的な付加価値」の重要性が高まっています。

振込手数料の削減、入金確認の自動照合、給与・外注費の一括振込、経費の可視化——こうした「経理業務をラクにする機能」が銀行選びの基準の一つになりつつあります。

電卓や資料を使う様子

地方銀行の数は、1990年末の132行から2025年3月末には97行へと約3割減少しています。合併・統合が続く中で「地域の担当者が変わった」「支店がなくなった」という声も聞かれており、金融機関の組み合わせを見直す経営者が増えています。

ただし、融資審査・地域ネットワーク・長年の取引実績という点では、地方銀行・信用金庫が依然として優位性を持っています。「地方銀行の口座はそのままに、サブバンクとしてネット銀行の口座を活用する」という棲み分けが、多くの中小企業が選んでいる現実的な対応策です。

3. 金融のデジタル化——「使わない選択」がコスト増になる時代

2025年は、法人向けデジタル金融サービスの参入が相次いだ年でもありました。大手金融機関が法人向けデジタルバンキングを本格的に整備し始めており、法人金融の「デジタル化」はもはや一部の先進企業だけの話ではなく、中小企業にとっても実用的な選択肢として手の届く範囲に来ています。

デジタル化・データのイメージ

振込手数料・口座管理コスト・経理の人件費を合わせた「見えないコスト」は、中小企業の取引コスト全体で売上の約3.5%に相当するという試算もあります。すべてをデジタルに移行する必要はないものの、活用できる部分から導入を検討することが、経営効率の観点から現実的な選択肢になっています。

まとめ:「目的に応じた使い分け」が今の標準形

地方銀行からネット銀行への移行は、「地方銀行を選択肢から外す」という話ではありません。融資や地域サポートという側面では、引き続き地方銀行・信用金庫に強みがあります。重要なのは「目的に応じた使い分け」であり、日常の決済・振込をネット銀行で行うことで、全体のコストと業務効率を最適化していく発想です。ネット銀行の法人口座活用は10年間で6倍に拡大しており、使い勝手・手数料・開設スピードのすべてで現実的な選択肢として機能しています。まず自社の振込件数と手数料コストを確認し、サブ口座の活用を検討することが、経営改善の第一歩となります。

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